トピックス     2008.12

       トヨタ“非正規切り”
        期間工“基幹工”
     
日本一の利益支えてきたのに…
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                                    【 トヨタ期間従業員の日記 (3回目) 】  ジャンプ 


 景気悪化でも6,000億円もの経常利益をあげる見通し(09年3月期) をもちながら、大企業による “非正規切り” の引き金をひいたトヨタ自動車。 この20年間、同社は正社員を増やさず、期間従業員(期間工) を増やして日本一の利益をあげてきたことが明らかになりました。 岡清彦記者

 いまから約20年前の1990年、トヨタの経常利益は、7,338億円でした。 08年3月期決算では、2.2倍の1兆5806億円ものばく大な利益をあげました。

 しかし、正社員は逆に7万人(90年) から6万9千人(08年) へと減っています。

 一方、90年に2100人だった期間従業員は、バブル崩壊後の不況で “期間工切り” がおこなわれた結果、94年にはいったんゼロになりました。

トヨタ自動車の正社員数と期間従業員数の推移(表)、期間従業員を増やして利益を上げてきたトヨタ自動車(折れ線グラフ)

 しかし2000年以降、トヨタの急激な生産増に合わせて増え、最高時は1万人を超えて、生産現場の3割を占めるに至りました (04年)。 そして07年、トヨタはGMを抜いて世界一の自動車メーカーに。 期間従業員が、文字通りトヨタの “基幹工” として支え、利益を生んできました。

 期間従業員の日給は約1万円で、年収は約300万円程度です (残業代を除く)。 正社員の平均年収(829万円) の半分以下です。

 生産増になると増やし、生産減になると減らす―― 。 トヨタは、安い賃金と雇用の調整弁として期間従業員を使ってきたのです。

 これをあけすけに語ったのが、中間決算発表(11月6日) での木下光男副社長発言です。

 「期間従業員は、(今年1月の) ピーク時に9,000人前後在籍していた。 ずっと前は、多くて3,000人。 近年の急な生産増と正規社員が法律で残業がしにくくなったから。 (09年)3月末時点では、3,000人前後の在籍になるのではないか」

 ことしになってすでに減らした3,000人に加え、新たに3,000人を切ることを表明したのです。 株主への中間配当金は2,037億円。 5%の90億円もあれば3,000人を切らずにすむのに――。

 『トヨタの品格』 の著書がある愛知労働問題研究所の伊藤欽次副所長が語ります。

 「トヨタの1兆円を超える巨額のもうけと13.9兆円のため込み利益は、正社員を増やさず、期間従業員を生産調整弁にして得たものだ。 トヨタは、社会的責任を果たすために、即刻 “期間工切り” を中止すべきだ」


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トヨタ期間従業員の日記 (3)−

 トヨタ自動車で働く20代の期間従業員、篠田哲男さん(仮名) が職場日記を書きつづけています。 3回目を紹介します。
 悔し涙で… 「働きたい!」                  
( 1回目 → こちら )      ( 2回目 → こちら



11月26日 1年間の契約満了で、この日に雇い止めになった正次君(25)。 友人たちとファミレスへ行き、その後、独身寮の僕の部屋にくる。 かれは怒りをこめ、悔し涙で語る。 「僕たち期間従業員は、トヨタの過酷なライン業務をささえてきた。 その自負はある。 辞めたくて辞めたんじゃない。 もっと働きたかった」 朝の5時まで話しつづけた。

11月28日 正次君から電話。 「ハローワークへいってきた。 朝早くから人だかりで、満杯状態。 相談者は “待ち” “待ち” “待ち” だった。 自分より年上の人が多いのにびっくりした。 50歳前後の人が、職員に食い下がるように相談していた。 僕は、若いからなんとかなると思うが、おじさんたちはどうなるんだろう」

 僕は正次君にいった。
 「九州出身の秀人さん(40代) は、12月下旬で満了だ。 切られたら、ネットカフェや漫画喫茶暮らしになりはしないか心配だ。 猛君(20代) も来年春に満了だ。 北海道へ帰るといっていたけど、大丈夫か―― 」

 正次君は、「とにかく、ハローワークの状況をみんなに伝えてくれ」 という。

12月5日 正次君が独身寮を訪ねてくる。 「ハローワークに、5〜6回通った。 この地域は、社員募集が10件を切っている。 募集定員は1〜2人。 激戦だ。 あまりに仕事がない。 ハローワークにいくだけで落ち込む」

 テレビで共産党の志位委員長と麻生首相の党首会談が放送された。 志位委員長が 「非正規切りを許すな」 といっている。 すごい! 正次君が 「志位さん、いいこというね」 と共感をしめす。 いすゞで労組をつくったのにもびっくり。 4人で組合ができるんだ!

 正次君が、「ほかの企業や仕事を紹介してくれるのならわかるが、トヨタは何もしてくれない」 という。

12月9日 正次君から電話。 「トヨタがみんなの人生を狂わせた。 トヨタは、人間を商品として扱っていたことに気づいた」 と怒る。

 出典: 日本共産党発行の 「しんぶん 赤旗・日曜版」 2008年12月14日付

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