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1.士気低下に危機感
「見直し前と何も変わっていません」。 どの富士通社員からもそんな答えが返ってきました。 いずれの人からも、「うんざり」 といった表情が見てとれました。
富士通は昨年度、成果主義賃金の見直しを実施し、成果の評価を従来の個人単位からチームワークなど組織単位を重視する方向に転換しました。 成果報酬は部に与え、配分は現場の部長に委ねるというのが柱です。
評価も従来の目標の達成度ではなく、プロセスと実現した成果そのもので評価する方法に変え、最も評価の高い社員名を公表するなどの見直し策を打ち出していました。
当時、「成果主義は曲がり角」 とマスメディアも大々的に取り上げました。 しかし、一年が経過した現在、社員から 「変わった」、「よくなった」 といった声は一向に聞こえてきません。
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開発部門の総本山といわれる富士通川崎工場
=神奈川県川崎市
富士通
大手コンピューターメーカー。従業員約3万7,000人。 2001、2002年度と2年連続して1,000億円を超える巨額の赤字を計上し、現在は回復基調にありますが、多くは人員削減などリストラ効果によるものです。
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「何も変わらない」
「最も高い評価の社員名の公表は聞いたことがない。 富士通はこれまで数え切れないほど見直し策を出していますが、何も変わっていません。 やはり求められるものは同じく成果でしかない」
と男性社員は話します。 「ただ、変わったことといえば、社員に対するしめつけがいっそうきびしくなっていることです」 と付け加えます。
「成果主義の弊害によるものですが、チームワークが乱れ、社員の士気が低下してきています。 この結果、管理職が社員一人ひとりを管理し、出張先でも出向いて張りつくのが常態化しています。 チームをまとめ、成果をあげられない課長や部長は更迭されるというきびしい状況です」
チームワーク重視の見直し策も、こうした危機的な状況を反映してのものです。 しかし、成果主義の実害は、想像以上に職場や社員の心や体をむしばんでいます。
システムエンジニアの男性社員は「成果主義導入前は、みんなでけんけんごうごうと意見をいい合ったものですが、今では皆無です。 現在月2回みんなが集まって課題を発表する機会をもっていますが、集まっても何もしゃべらない、しゃべっても反応がありません。 いつも発表者が単に発表するだけで終わつています」と嘆きます。
専務が社員に向かってこういったことがあります。 「意見をいってくれ。部長が必ずしも正しいとは限らないんだから」 と。 殻に閉じこもり、物いわぬ社員たちに業を煮やしたのです。
「目先の成果につながらない仕事には手を出すな」。 目標の達成度で評価が決まる成果主義のもとで、職場は長年そんな雰囲気に覆われてきました。 同僚がどんな仕事をしようと無関心を決め込み、ひたすら成果に向かってまい進しました。
社員に責任転嫁
成果主義の導入当時、社長はこういいました。 「要領よく手を抜きなさい。成果は時間じゃないよ」 と。 しかし、それは後に修復できないほどの弊害を生む結果になりました。
社員は目先の成果に追われ、失敗を恐れてチャレンジする精神さえ失ったのです。
「業績が悪いのは社員が働かないからだ」(2001年10月) と当時の秋草直之社長(現会長) が声を荒らげたことがありましたが、自らの経営責任を問わず、社員の責任にすりかえた発言は大きな反発を買いました。
「目先の成果に結びつかないことはやらないという長年の働き方が、富士通の体質をつくりました。 不透明な評価とあいまって、社員の士気は著しく低下しています。 業績低迷の原因となり、会社にとって死活問題になっています」 と同社員は話します。
◇◇◇
1993年に他社に先駆けて成果主義を導入した富士通。 後を追うように導入を急ぐ企業が相次いでいます。 しかし、目先の成果しか追わなくなるなどその実害が噴き出し、業績は大幅にダウン。 毎年のように見直しを余儀なくされています。
迷走する富士通のいまをリポートします。 (つづく)
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(以上 「1.」 の出典は 「しんぶん 赤旗」 2006年6月9日付)
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2.社長メールに無反応
「私のところに成果主義についてのメールが多く来ています。 批判的なものも多くあります」
富士通社員の元へ黒川博昭社長から突然こんな書き出しのメールが届いたのは、一昨年の11月初旬のことです。 社長自ら事態を収拾し、「改革」 に乗り出さなければならないほど深刻な状況に陥っていることを示していました。
弊害認めたが…
「ここ2〜3年の当社の経営の不振を成果主義が原因だというような批判が一部にあるのは残念です。 全てを成果主義のせいにするのは間違っていると思います」
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若手社員との座談会で 「『自覚と誇り』を
忘れずに」 と話す黒川社長=社内報から
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こういって成果主義を正当化する一方、こんな記述がありました。
― 個人が目標達成を過度に意識したために、高い目標への挑戦を避ける傾向があった。
― 上司が承認した目標を達成したのに、評価が下がる社員が出た。
― 短期的な結果を過度に重視し、プロセスを軽視する傾向があった。
社長直々に弊害の事実を認めるのは異例のことです。 社員のやる気を最大限に引き出そうと導入した成果主義。 しかし、実際にはそのねらいとは逆に放置できない害悪があらわれたのです。
しかし、黒川社長は成果主義は時代の流れであるとして正当性を強調してはばかりません。 メールはこう呼びかけます。
「当社は他社に先んじて成果主義を導入し、いろいろな貴重な経験を積んできたというアドバンテージ(優位性) があります。 …富士通がやってきた成果主義の取り組みの経験は、日本の企業がこれから成果主義を導入するにあたって、非常に役立つものだと思っています。
この過程と経験はオープンにするべきだと思っています」
さらにこうも ――
「みなさんは、会社を自己の成長を実現する場として、個人の成畏と成果に応じた報酬を得ることをめざし、そのために、会社は、社員が最大限に能力を発揮できる場を提供するという関係になります。 それが結果的には、会社の成長、しなやかな組織、高い利益を生むという循環をつくっていくことになると思っています」
社員がバラバラ
しかし、成果主義の理想を説いた社長のメールも、職場ではとりたてて話題にならなかったといいます。 逆に、その情報が翌日にインターネット上に流れ、見直し策についてのアンケート調査まで実施されるほど話題になりました。
社長は「明らかに社員がかかわっているとしか思えない。 はっきりいって就業規則違反であり、会社に対する背信行為」 と怒ったといいます。
「社長のメールが届いたとき職場では何の反応もありませんでした。 当然、議論もなし。 それほど社員はバラバラにされているということです」 と技術職の男性社員。
「不満がうっ積しても声を発しない。 それが成果主義がもたらした最も深刻な部分です。 外部サイトへの流出問題も、その象徴的な出来事です」 (つづく)
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(以上 「2.」 の出典は 「しんぶん 赤旗」 2006年6月10日付)
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3.意味失う 目標管理
ほとんど変わらないといわれるなかで、唯一、変わったといえるのが 「目標シート」 です。
富士通が採用する成果主義は 「目標管理制度」 といわれ、半期ごとに各社員が自分の目標を上司と相談の上、目標シートというリポートの形で提出します。
期末に再び上司と面談して、それがどの程度達成されたかを評価し、賃金に反映させる仕組みです。
日本のほとんどの企業が採用しています。
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2005年度から使用している
成果評価シート(目標シート) |
評価 “インフレ”
A3サイズの目標シートに、従来は個別目標などを6枚も6枚も書かなければなりませんでした。 それが一枚だけになりました。
「これまで記入に多くの時聞を割きました。成果を裏付ける資料も集めなければならず、面談も10数時間に及びました。 このため深夜にタクシーで帰ることもめずらしくありません。 大変な労力を使って提出したのに、結果は不透明で納得のいかない評価です。 評判はよくありませんでした」 と技術職の男性社員は話します。
ところが、そうやって簡略化した目標シートでさえ提出しようとしない社員が増えています。 「3カ月遅れで目標シートを提出する社員がごろごろいます」
と指摘するのは、システムエンジニアの男性社員です。 「今期の場合、本来なら4月までに個人目標を提出しなければなりませんが、職場では私を含めてだれも提出していないと思います。
上司との面談も始まっていませんから。 期の半ばをすぎるまで目標を設定しない社員が半数以上いるともいわれています」
成果主義の根幹ともいえるこの目標管理制度の形がい化が進行しているのです。 その根底には、同制度に対する信頼度が著しく低下していることがあります。
評価はSA、A、B、C、Eの5段階あり、A以上が目標達成となります。 SAは極めて高い評価に値する成果を上げた場合です。
「目標を達成したのにB評価にされた」、「同じA評価なのに給与が下がった」 など、評価の不透明さはいまだに解消されていません。 今ではSAとAだけで6割以上を占め、評価の
“インフレ” が起きています。
信頼度の薄い目標シートに社員が真剣にならないのも無理はありません。 高い目標を掲げるのをちゅうちょする社員も増えているといいます。
「そもそも年2回も細かい個人目標を設定すること自体に問題があります。 当然のことですが、業界の動向によって社の方針が突然変更されることがあります。
長期の視点に立った柔軟な目標設定こそ必要であり、短期の目標を追い求める現在の目標管理制度が形がい化するのはある意味当然ではないでしょうか」
上司が愚痴る場
上司との面談は、「上司の愚痴を聞く場」 と化します。 数十人にのぼる部下の目標を設定し、それに評価を加える作業がどれほど煩雑なものか。 「社員一人ひとりについてまじめに評価を検討していたら、ノイローゼになる」
と訴える管理職もいます。 時闇内では処理しきれず、自宅に持ち帰って作業することもめずらしくありません。
部下が目標を達成できないと管理職の評価にも直結します。 このため部下の高い目標を抑える管理職も少なくないというのが現実です。
「目標管理制度に疑問をもっている管理職は少なくありません。 目標シートが形式的なものになり、意味を失ってきています。 目標のあるなしにかかわらず、社員の評価はあらかじめ決まっており、期末に微調整するというのが実態ではないかと思います」
と同社員は話します。 (つづく)
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(以上 「3.」 の出典は 「しんぶん 赤旗」 2006年6月11日付)
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4.矛盾噴出も 手放せず
「今年の春闘で、富士通は5年ぶりに1,000円の賃上げをしたんですが、私の場合、600円しか上がらないんですよ」 50代の技術職はため息まじりに語りました。
春闘で賃上げしても、成果主義賃金のもとでは誰もがアップするわけではなくなっています。 富士通では、2,600円もアップする “破格” の社員が出る一方で、多くの社員は1,000円にも届かず、なかには賃上げゼロとなる人も出ました。
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大手電機労組が加入しているJC(金属労協)の06春闘集中回答=3月15日、東京 |
「わずか1,000円の賃上げでも、等級や評価によって格差をつけています。上がる可能性があるのは若い人だけで、中高年はほとんど上がりません。若い人でも1,000円以上アップするのは等級が高く、かつ高い評価を受ける限られた人だけなんです」
縮小する上げ幅
賃金は、定期昇給分にあたる 「本給」(基本給) と、成果や職務内容で決まる 「職責給」 の二本柱で構成されます。 成果主義は、その両方に導入されています。
本給は、高卒入社の社員に適用される3級から主任クラスの6級まで4段階あり、それぞれ4つの階層に分かれます。 各階層ごとに昇給の上限と下限があり、評価によって上げ幅が決まります。
職責給は等級ごとに3〜4段階に分かれ、年齢や勤続年数に関係なく等級と評価で決まります。
高齢者ほど本給の割合が高く、職責給とほぼ半々です。 若年層は職責給が本給の倍もあります。
富士通では、成果主義の導入に伴って本給の上限部分を引き下げ、昇給率も圧縮してきました。
「年功的な要素が残る本給は、当然ながら勤続年数の長い中高年層が高い。 しかし、最高の業績を上げてもほとんど上がらなくなりました。 最高の評価でも、わずか150円のアップで、目標を達成しても50円です」
若いときはそれなりに本給は上がりますが、30半ばを過ぎると頭打ち――本給水準の推移をみると、減額ぶりが鮮明です。
たとえば本給が最も高い6級Tの場合、2000年度には上限が24万円だったのが、2005年度は22万と2万円も下がり、下限も20万5,000円から19万円にダウン。
その他の等級も軒並み水準が切り下げられています。 (右の図参照)
この間、職責給の額自体は変わっていません。 しかし、本給の切り下げの影響で、賃金が前年度より増えても、一年前の同じ年齢の社員と比べると賃金が下がってしまう状況が起きています。
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同じ成果を上げても、年を追って上げ幅が縮小する仕組みになっているからです。 上げ幅は、SA、A、B、C、Eの5段階評価の 「累積ポイント」
によって決まりますが、その基準を年々切り下げているのです。
総人件費の抑制
たとえば2001年度は4ポイントを獲得すれば上がっていた額が、2006年度は5ポイントを取らないと上がらなくなりました。
「本給が最高の24万円近くあった社員はすでに定年退職し、存在しない。 そうやってどんどん全体の水準が引き下げられている」 とシステムエンジニアの男性社員。
「全体の人件費を増やさず、従業員の意欲を引き出す賃金制度にしたい」。 富士通が2003年春に本給の上隈引き下げと昇給率の圧縮を打ち出したとき、労務担当役員の岡田恭彦執行役(当時)
はこういっていました。
しかし、士気の低下など弊害が噴出し、見直しに次ぐ見直しをくり返しても、成果主義を手放そうとはしませんでした。
「どんなに矛盾が噴出しても成果主義をやめないのは、それ以上のうま味があるからです。 それは総人件費の抑制効果です」。 どの社員も口をそろえて話します。 (つづく)
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(以上 「4.」 の出典は 「しんぶん 赤旗」 2006年6月13日付)
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5.自殺を恐れ 屋上閉鎖
「SPIRIT の対象者は随分減りました。 今では6級職の10人に1人の割合しかいません」 とソフト開発担当の男性社員は話します。
「SPIRIT」 というのは、富士通が1994年に導入した裁量労働制の名称です。 労働時間を個人の裁量に委ねることにして、労働時間の長短ではなく、成果による評価をより賃金に反映させる目的で導入されました。 いわば成果主義と二本柱。 主任クラスの6級職が対象者です。
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帰宅を急ぐ川崎工場の社員
=午後10時ごろ、JR武蔵中原駅 |
「スタート当初は裁量労働制の適用者になるよう上司から強要され、反対すると昇進を閉ざすことになると脅かされました。 今は逆に適用者を絞り込んできています」
と同男性社員。
裁量労働制の場合、残業代は一定時間分相当の手当しか支払われません。 経営側が最もメリットを受ける制度といわれるゆえんです。
残業の多さを理由に裁量労働制の適用を強要されたり、逆に出社時間の遅さを理由に通常勤務に戻されるという事態が頻発しました。
時間外手当ゼロ
「社員の自由度がひろがる」などというキャッチフレーズは、当初から形がい化していました。 いま、新たな矛盾を広げています。
「適用者には月30時間程度の裁量手当を支給しているので、それ以下しか残業していない社員は会社にとってメリットがなくなります。 そんな社員も少なくなく、会社の当初のもくろみがはずれたのです。
現在残っている適用者は、リーダー的存在の社員ばかりで、夜遅くまで残業せざるを得ない入が多い」 と技術職の男性社員。
こうやって絞り込んだ適用者にも、おぞましいばかりの人件費抑制策が貫かれています。
裁量労働制の適用者には夜10時以降の深夜残業については、時間外手当の支給対象になりますが、その時間算出方法には驚くばかりです。
たとえば夜10時以降に月延べ30時間の残業をしても、時闇外手当は1円も支給されません。 月31時間残業して初めて1時間の時闇外手当が付きます。 つまり夜11時すぎまで毎日残業しても、裁量手当30時閻分のみで時間外手当は支給されないのです。
「残業時間の多い社員には裁量労働制を適用し、少ない社員には適用しないという精神が徹底して貫かれています。 会社にとってこれほど都合のよい働かせ方はありません」
と同社員。
精神疾患が急増
しかも見逃せないのは、社員の長時間労働を助長し、精神疾患を増加させていることです。
開発部門の総本山といわれる川崎工場。 夜10時、11時になってもビルの明かりはこうこうと照っています。 年閻に有給休暇を1日も取得しない組合員が全社で2,000人を超えるといわれます。
精神疾患が急増し、休職の大半が精神疾患です。
「毎夜11時ごろまで働くのは普通のことです。 土、日曜も時々出勤しています。 屋上は現在閉鎖中ですが、別ルートの階段があり、少し前までは上がることが可能でした。 ところが最近そこも閉鎖され、上がれなくなりました。 社員が屋上から飛び降り自殺するのを警戒しているんです」 と川崎工場で働く男性社員は話します。 (つづく)
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(以上 「5.」 の出典は 「しんぶん 赤旗」 2006年6月15日付)
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6.やる気も 信頼も 失う
「今でも何とかしてほしいというメールが社員からたくさん届いています」。そう話すのは元富士通人事部に所属していた城繁幸さん(33)です。ベストセラーとなった 『内側から見た富士通 「成果主義」 の崩壊』 (光文社刊) の著書で知られます。
数々の生々しい実態を暴き、社内でも大きな話題になりました。 黒川社長がマスコミとの懇親会の席上で、「私も読んだ。書いてあることは基本的には事実」
と認めました。
「日本の成果主義は全体として、評価方法などの見直しに進んでいます。 あくまでも成果主義に突き進むのであれば、その方向しかないのではないかと思っています。
富士通が実際にどう運用しているか、その実態は私にもよくわかりませんが」 と城さんは話します。
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富士通本社がある汐留シティ
センター =東京・港区 |
若い社員が離職
「成果主義とは本来、成果を上げるだけの権限をもったポストに適用してはじめて効果があるものです。 権限のない一般社員に適用しても、いじめになるだけで、ほとんどの場合、モチベーション
(動機付け) のダウンにしかつながらない。 いい評価をとろうと奮起する社員もいるでしょうが、せいぜい一割くらいでしょう」
この指摘は富士通のケースにそのまま当てはまります。 城さんが注目しているのが、若年労働者の離職問題。 成果に報いるという看板に偽りありと考えているからです。
「私も現役時代は年閻2,700時間くらい働いていましたが、現在の日本の若年労働者は欧米と比べて1.5倍も長く働いています。 初任給は低く抑えられた上に成果を強要される。
アフターファイブも自由になりません。 若年労働者が希望のもてる賃金制度にする必要があります」
成果主義で社員のやる気をそぎ、精神主義でそれをカバーしている」。 男性社員が、嘲笑 (ちょうしょう) 気味に語ります。
「なぜみんな上司の顔色ばかり見て仕事をしているんだ、と聞かれ、目先の目標と成果だけですべてが評価される中で、そうなってきたと答えたことがあります。 一人ひとりが壁をつくり、上の方しか顔を向けていないということです。 この一年間に3人の若い社員が職場を去りました。 そんな職場に希望がもてなくなっているのです」
遅れ・ミス多発
富士通では、商品の欠陥や納期の遅れ、見積もりミスなどシステム開発プロジェクトの失敗が続出。 昨年11月にも富士通の作業ミスで東京証券取引所の売買システムが4時間以上停止しました。
現在その改善に取り組み、「2005年度の失敗プロジェクトの数は、前年比で75%削減できた」 (黒川社長) としています。 その帰すうを握るのが、成果主義の見直しがどこまですすむかにあります。
「成果主義の弊害が直接影響しているかどうかわかりませんが、無視できない問題をはらんでいると思います」 とソフト開発担当の男性社員はこう強調します。
「技術を大切にしようという雰囲気が薄れ、上役の考えと採算性だけで動くという由々しい状況になっています。 絶えず評価がちらつく職場環境を改め、社員との信頼関係を回復させることが先決です。 ひいては顧客との信頼関係を取り戻すことにもつながると思います」
(おわり)
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(以上 「6.」 の出典は 「しんぶん 赤旗」 2006年6月16日付)
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