中央労働委員会における審問
        
(第二次申立) の 「傍聴記」

 第1回審問…双方の証人主尋問 (2007.12.10…13:30-16:40)
12月に入り鮮やかに色づいた “イチョウの葉”

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 第1回審問… 双方の証人主尋問 (2007.12.10()… 13:30〜16:40) の 「傍聴記」

 冒頭に、審査委員(公益委員) が、「当委員会での審問の進行は、本日の主尋問と、次回 (2月5日) の反対尋問を行なって結審することにします。 これに使用者(会社)側も 労働者側も異論がないようなので、そのようにすすめます。」 と述べました。

 そして、会社側の証人1名と、労働者(差別是正申立人)側の証人3名の 計4名の主尋問が行われました。

   ◇◇◇

 最初に会社側の遠藤証人 ((京浜)の製造部門の課長) の主尋問でした。 約50分間の尋問で証言したことは、要するに、“作業長や技長、製造長などの役職に任命する基準は、技量とともに部下をまとめる能力など全般にわたって上長が評価する。 申立人らはそのような能力がないから役職には任命されない” というものでした。 途中、労働者(差別是正申立人)側の弁護士が、「自分が書いた陳述書をただ読んでいるだけで、証人尋問の意味がないではないか。 陳述書は見ないで証言するものですよ。」 との指摘に、いささか動揺した様子でした。

 この尋問を聞いていて、会社が申立人らを差別する意図を持っている限り、いくら客観的に技量やまとめる能力があっても、役職につかせないのが実態ではないか、会社側の証人尋問の意味は何なのかと疑問を感じました。

   ◇◇◇

 続いて、労働者(差別是正申立人) 側の石川さんが証言しました。 石川さんは約1時間にわたって、東芝(会社) の労働者支配の特徴、賃金制度とその実態について証言しました。

 東芝(会社) の労働者支配の特徴について、石川さん自身が入社して間もなく職場労働者の様々な要求をとりあげ、その実現のために多くの仲間と一緒に自主的な労働組合活動をしたこと、それによって会社から差別を受け始めたことをくわしく証言しました。

 そして、東芝(会社) が労務管理のためにつくったインフォーマル組織である 「東芝扇会」 とその後継組織である 「自己啓発の会」 について証言しました。 石川さんは、1970代のはじめに作業長の机の上に扇会の機関誌 「おうぎ」 が置いてあったことから扇会の存在を知ったこと、差別争議の中で会社は 「扇会」 をそのまま続けることが社会的にまずいと判断して1998年に 「自己啓発の会」 と名前を変えて現在も各工場・事業所ごとに組織し継続していることを、多くの証拠に基づいて証言しました。

 とくに、「自己啓発の会」 の会員自身が、「会の存在がイリーガルなため、情報を共有化すべき職場の同僚には 『組合の集まりがあるからお先に』 と言いながら会の集まりに出席したりしている。 もっと公明正大に活動できるように会社側に再考していただきたい。」 とアンケートに書いていること、「“イリーガル” とは違法という意味」 ですから、違法な活動を会社が会員にさせていることにあらためて怒りを感じました。

 石川さんは東芝の賃金制度とその実態について、申立人らは同期同学歴者と比べて、資格、仕事給等級、基準賃金、一時金のいずれもひどく低位に格付けされている実態を、具体的な資料に基づいて証言しました。

 最後に石川さんは、「このような会社の労務管理によって、全国の工場・事業所で差別されているすべての労働者 (申立をしていない人も含めて) に対し、会社は早期に謝罪し、差別を是正すべきです。 中央労働委員会が是正の命令を下すように希望します。」 と述べ、傍聴席から共感の大きな拍手が起きました。

   ◇◇◇

 続いて中村さんが証言しました。 中村さんに対しては、神奈川県労委が中村さんの労働組合活動とそれを嫌悪した会社の不当労働行為意思の存在を認めながら、比較すべき対象が明確でないとの理由で、差別是正を会社に命令しませんでした。

 中村さんは、各種の溶接技能試験に1回で合格したこと、たびたび全国各地の火力発電所、原子力発電所に出張を命じられ、配管などの溶接を行なったことなどを証言しました。 高い技能を持つ労働者であることがよくわかりました。 にもかかわらず、自主的な労働組合活動を行なっていたため差別を受けてきたことを、「問題者」 としてリストアップされている会社の秘密文書を示して中村さんは証言しました。

 そして 「入社以来ずっと溶接などの技能職だった。 事務技術職の仕事は3年間だけです。 技能職の同期同学歴者と比べて差別は歴然としている」 と、具体的な比較データを示して証言しました。

   ◇◇◇

 最後に、塩田さんが証言しました。 塩田さんに対しては、神奈川県労委が病欠があるからという理由で差別是正を会社に命令しませんでした。

 塩田さんは、結核で病欠するはるか以前から(出勤率がほぼ100%でありながら)、自主的な労働組合活動を嫌悪して会社が同期同学歴者と比較し年200万円も低く差別し、病欠後の出勤率100%の時期もずっと差別していることを、一目瞭然なデータを示して証言しました。

 そして、「私は低賃金に置かれながら主務相当の仕事をしています。 ところが雇用延長は拒否され、これでは会社の差別意思による使い捨てと言わなければなりません。 東芝に働く労働者みんなが明るく生きがいをもって働ける職場にしたい。 事実に即した適正な命令を望みます。」 と最後に塩田さんは述べました。 胸があつくなり、おもわず大きな拍手を送りました。

                                             以上      (M記)


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