トピックス     2009.1

   世論になった!
  
     
“内部留保使えば雇用守れる”
         政府首脳言及   メディアいっせいに

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 大企業は、ため込んだ内部留保の一部をつかうだけで、雇用を維持することができる―― このことが、いまや世論となっています。 麻生太郎首相も、内部留保の活用を企業側に要請すると表明せざるを得なくなっています。

大企業の内部留保と派遣労働者の推移 (年度別比較のグラフ)
(「しんぶん赤旗」2009年1月10日付、ホームページより)
   麻生首相は否定できず

 トヨタ自動車、キヤノンなど日本を代表する大企業が 「非正規社員切り」 を競いあっています。 日本共産党は昨年11月11日に発表した緊急経済提言で、大企業の内部留保は230兆円にのぼると指摘。

 「体力も十分ある大企業が、雇用に対する社会的責任を放棄し、『首切り』 『雇い止め』 による大失業の嵐の引き金を引くなどへ許されるものではありません」 と批判しました。

 志位和夫委員長は、麻生首相への申し入れ (昨年12月4日)、日本経団連との会談 (同12月18日)、トヨタ自動車との会談 (同12月24日)でも 「(大企業のほとんどは) 株主への配当も減らさず、巨額の内部留保も持っており、大量の失業者を路頭に迷わせるような人員削減を強行する根拠はまったくない」 (麻生首相への申し入れ) と迫りました。

 こうしたなか、共同通信は昨年12月23日、トヨタやキヤノンなど大手製造業16社が約4万人の人員削減を進める一方、内部留保を空前の規模に積み上げ、株主配当を5社が増やし、5社が維持の方針だと配信。 東京新聞などが12月24日付一面トップで報じました。

 政府の対応にも変化が生まれました。 河村建夫官房長官は1月5日の記者会見で、雇用問題について 「企業は、こういうことに備えて、内部留保という制度も持っている」 として、内部留保の活用に言及しました。

 河村官房長官は、1月9日の衆院予算委員会で、日本共産党の笠井亮議員の質問に 「雇用の維持に最大の力を果たしていくのも、企業の社会的責任。 内部留保の活用もその一つになっていくだろう」 と改めて表明。

 麻生首相も 「内部留保の扱いについては (雇用に活用するよう) 重ねて言わないといけない」 と述べ、企業側に要請する考えを表明するに至りました。

  財界首脳に記者が質問


 財界3団体首脳が1月6日、東京都内のホテルで開いた共同記者会見でも、内部留保の雇用への活用について、記者団とやりとりがありました。

 記者から、「年末年始にかけて日比谷公園で繰り広げられた (年越し派遣村の) 光景をどのようにごらんになったか。 経営者としての責任はお感じになっているか。 河村官房長官が内部留保を吐き出して雇用対策にあたれと受け取れるような発言をしたが」 との質問が出ました。

 これに、日本経団連の御手洗冨士夫会長 (キヤノン会長) は 「急激な減産に追い込まれた企業が雇用を持ちきれずに調整に入った。 その結果、ああいうこと (=派遣村) が社会現象として起こっていることは、非常に遺憾なこと」 と企業の責任を認めつつ、「私も個人として心から同情している」 とまるで人ごと。


大企業は社会的責任を果たせと、経団連に抗議する人たち
=08年12月16日、東京・大手町

大分キヤノンの工場=大分市丹生
 内部留保の雇用への活用については 「内部留保というのは利益が出れば、法人税を払って、その残りで自動的に積まれていく」 とした上で 「基本的には企業の将来の投資とか、存続のために存在する」 と答えました。

 その一方で、御手洗氏は 「いまの雇用状態を解決するためにあらゆる手段を講ずる」 と発言。

 記者が 「あらゆる手段の中には内部留保を取り崩すという選択も入っているということか」 と重ねて質問すると、御手洗氏は 「ちょっと論点が違う」 と答えるのがやっとでした。


トヨタ自動車本社=愛知県豊田市

 内部留保
 企業が年々のもうけをためこんだもの。 各年の繰越利益や積立金などの 「利益剰余金」、資本取引などでのもうけをためこむ 「資本剰余金」、実際には支出していないのに隠し利益としてためこむ各種引当金などが含まれます。


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    政府首脳言及     メディアいっせいに

 ◆ 配当はそのままか

 1月11日放映のNHK 「日曜討論」 の党首インタビューで、NHKの影山日出夫解説委員が、自民党の細田博之幹事長に、企業側の対応について 「従業員を解雇・整理しても、株主への配当は続ける、巨額の内部留保も取り崩さないところが多い。 これは、おかしいとは思いませんか」 と質問。

 同日放映のテレビ朝日系番組 「サンデープロジェクト」 で、司会の田原総一朗氏が 「内部留保はいま最高だ。 なんで派遣を切るのか」 と述べるなど、体力があるのに人減らしに走る企業の姿勢が問題にされています。

 ◆ 雇用維持が筋では

 「毎日」 08年12月28日付社説は 「不況直前までの大手企業の好業績を支えたのが、低賃金で働く非正規の人たちだった。 この間、大手企業は多額の収益を従業員に回さずに内部留保としてため込み、不安定な働き方を強いられる非正規を放置してきた。 今こそ、その収益を非正規の雇用維持のために向けるのが筋ではないか」 と指摘。

 山陽新聞1月9日付社説は 「大規模な雇用打ち切りを決めた大手企業の中には、膨大な内部留保のある会社も多い。 業績が悪化し始めた途端、大量解雇を打ち出す対応は安易すぎるのではないか」 と書きました。

 ◆ 社会的責任果たせ

 NHKプログ 「解説委員室」 には時論公論 「不安を減らす雇用対策」 での次のようなくだりが紹介されています。 「苦しくても、利益をあげている企業は多いし、これまで内部にためてきた資金もあります」 「それなのに、これまで、安い賃金で働かせてきた派遣社員を業績にかげりが出た途端、100人、1,000人単位で削減する。 これで社会的責任を果たしていると言えるのでしょうか」


 出典: 日本共産党発行の 「しんぶん 赤旗」 2009年1月14日付

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