トピックス          2008.7

 政府…
 大企業優遇策
害悪
白状!
  
非正規増え 意欲低下…「労働経済白書」
  景気の家計波及なし …「経済財政白書」
 

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  非正規増え 意欲低下   成果主義見直しも求める

           − 2008年版「労働経済白書」 −

 厚生労働省は7月22日、2008年版 「労働経済の分析 (労働経済白書)」 を発表し、労働者の満足感が 「仕事のやりがい」 「雇用の安定」 「収入の増加」 などで長期的に低下していることを明らかにしました。

 白書は、その要因として、企業が1990年代から人件費の抑制を優先して正社員を減らし、非正規雇用が増大したためだと分析。 成果主義賃金の見直しや正社員化への支援を求めました。

 今回の白書は、「働く人の意識と雇用管理の動向の分析」 をテーマに、非正規化や成果主義賃金のもとでの労働意欲を分析しています。 労働意識を白書で分析するのは初めての試みです。
低下する仕事の満足度=年別比較の折れ線グラフ

 白書は、大企業の労働分配率は大きく低下していることを指摘。 持続的な経済発展を実現するために、雇用の拡大、賃金の上昇、労働時間の短縮にバランス良く成果を配分することを求めています。

 労働意欲については、非正規雇用化、成果主義賃金によって長期的な満足感の低下があることを指摘。 1990年代に企業が人件費の抑制を優先し、若年層の計画的採用や育成の努力を怠ったことで、満足感が低下したと分析し、正規雇用化への支援を求めています。 また、成果主義賃金の導入では、正規の中高年層で賃金格差の拡大による意欲の低下があるとのべ、賃金制度の見直しが企業経営の重要な課題だとしています。

 さらに、日本の産業構造について、1990年代までは生産性の高い産業に労働力が集中していたのに、2000年代以降は、生産性の低い分野に労働力が集中していることを分析。 生産性の高い製造業などで人員削減がすすみ、小売業やサービス業などで非正規雇用が増加することで、産業間の生産性格差が拡大しているとし、製造業などでの雇用拡大が課題だとしています。


    景気の家計波及なし   − 2008年版「経済財政白書」 −

 「期待されていた 『企業から家計への景気回復の波及』 は、実現に至っていない」。 政府の白書がこんな見解を示しました。

 この白書は、大田弘子経済財政担当相が7月22日の閣議に提出した2008年度の 「年次経済財政報告」 (経済財政白書)。 自民・公明内閣が固執し続けてきた 「企業から家計への景気回復の波及」 というシナリオの破たんを認めざるを得なくなりました。

 小泉内閣以来、自民・公明政権は 「構造改革」 路線の下、大企業を支援すれば、その 「好調さ」 が家計に波及するという経済政策にこだわってきました。
主な需要項目のGDPに閉める割合の推移(2000年T期を100とした指数)=年別比較の折れ線グラフ

 減税や補助金などで大企業を優遇する一方、庶民に増税と社会保障改悪による負担増を押し付けてきた 「構造改革」 路線の誤りを浮き彫りにした形です。

 また白書は、労働者の賃金について 「景気回復期を通じて定期給与が低調で推移する一方、最近はボーナスも振るわず、全体として伸び悩んでいる」 と指摘。 その背景として、企業の人件費抑制姿勢の強まりによる非正規雇用の増加が、所定内給与の低調さを招いていることや、企業収益が 「弱含み」 になったことによってボーナスも減少に転じたことをあげています。



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 【解説】

  大企業支援の非正規・成果主義… 政府が失敗認める

 今回の 「労働経済白書」 は、「仕事のやりがい」、「雇用の安定」 など労働者の仕事への満足感が、1980年代から長期的に低下し、90年代後半以降さらに悪化していることを確認しています。

 満足感が低下した理由を分析して、大企業が人件費削減を優先した新規採用抑制、非正規雇用化や人件費抑制のために導入された成果主義賃金の問題点を指摘し、その見直しを提言しました。

 これまで政府は、派遣労働の原則解禁など労働法制の規制緩和や、大企業のリストラ・再編の後押しなど大企業の成長を労働者の生活よりも優先する政策を 「構造改革」 の名のもとにすすめてきました。

 白書の分析は、大企業の成長ばかりを優先する政策の失敗を、政府自身が認めたことになります。

 しかし、成果主義賃金は多くの問題が指摘されているにもかかわらず企業による導入は止まっていません。 正社員化を求める世論と運動の高まりにもかかわらず、非正規雇用化も進行しているなど、労働政策への市場原理のもちこみは、依然として続いています。

 労働者保護を弱める労働行政をすすめてきた政府の責任があらためて問われます。

 「規制緩和」 路線から抜本的に転換し、労働者の生活と権利を守るための労働行政をすすめることが緊急に求められています。  (吉川方人)


   小売業 長時間営業… 生産性が低下

 労働経済白書は、スーパーなど小売業で、長時間営業になるほど、パート・アルバイトの比率が増え、12時間営業を超えると1人当たりの販売額も低下することを明らかにしました。

 パート・アルバイトの比率は、営業時間が8から10時間では、28.6%ですが、終日営業では83.8%にものぼります。

 また、百貨店・スーパーでの1人当たり販売額の増加率は、年を追うごとに低下傾向にあります。

 長時間営業が進行した1990年代以降、営業時間延長が顕著に生産性を低下させる要因となっています。

 1人当たり販売額の減少による生産性の低下は、パート・アルバイトによる労働コスト削減での生産性向上よりも大きくなっています。
営業時間別のパート比率と販売額=営業時間別のパートタイマーの比較(棒グラフ)と、1人当たり販売額(折れ線グラフ)
 白書は、「長い営業時間が労働生産性向上の抑制要因として働き、パートタイマーなどの過大な労働力需要につながっている」 とのべています。

 出典: 日本共産党発行の 「しんぶん赤旗」 2008年7月23日付、   同党のホームページ

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