[職場だより]  2015年11月20日   東芝再生への道8
資源を集中させた戦略商品の検証

10. 資源を集中させた戦略商品の検証

 経営改革は、2つの事業に資源(資金や人員)を 集中させて、2つの戦略商品を生産、販売して、利益 を上げる経営方針をとりました。

@ 電子デバイス事業のNAND型フラッシュメモリ
A 社会インフラ事業の原子力発電機

 NAND型フラッシュメモリに資源を集中させたのは、 適切な経営判断で、株主も社員も納得でき、評価され ました。

 しかし原子力発電機は、下記のように、原子力発電 所の事故や、使用済み核燃料の処理が問題で、世界的 には再生可能エネルギーによる発電を増やして行こう という流れが強まっていたのに、戦略商品にしたのは、 異常でした。

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・1979年3月28日スリーマイル島原子力発電所事故
・1986年4月26日チェルノブイリ原子力発電所事故

【イタリア】
1987年に国民投票で原発廃止を決定し、当時稼働 していた4基の原発を順次停止し、20年がたちまし た。

【ドイツ】
2022年までに原発の稼働完全停止を決定。

【日本】
原子力発電所から出る使用済み核燃料「核のゴミ」 が増え続け、多くの原子力発電所で貯蔵能力いっぱ いに迫っていました。もうこれ以上原子力発電所を 稼働し続けることは、無理な状況です。
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 一事業として原子力発電機を製造するのならまだしも、 東芝の事業の柱にすることに疑問をもつ社員もいました。 「東芝の職場を明るくする会」は、当初から反対を 表明していました。

 どうして原子力発電機は問題がある製品だということが、 社内で議論にならなかったのでしょうか。
それは、東芝は社員に「原子力発電は安全だ」という 教育をしていたからです。原子力発電は安全だという絵入 りのカラーパンフレットも作成し、社員や家族に配布を しました。社員と家族を対象にした、新潟柏崎原子力発電 所見学のバスツアーも実施していました。

 また会社の方針に異議を申し立てられない社風も作って きました。公安警察官OBなどを雇い入れ、秘密労務組織 (インフォーマル組織)の「扇会」を結成し、社員を監視 しました。労働組合で自主的に活動家する社員や、明るく する会の社員を見せしめで、賃金や昇格で差別し、会社に 物言えぬ体制にしました。

 この結果、原子力発電機事業を心配する意見は、押しつ ぶされてきたのです。

 2011年3月の東日本大震災で、福島の原子力発電所が甚大な 被害を受けて、大量の放射能が漏れる 大事故が起き、原子力発電は危険であることがハッキリ しました。

 原子力発電機を戦略商品にして、資源(資金や人員)を 集中させた経営方針は、東芝を苦難に導きました。 誤りでした。

 東芝は、先端の科学技術を利用して電機製品を製造し ていくメーカーです。たえず真理に向き合って、現実の 正しいデータや情報を基にして、モノ作りをしなければ なりません。誤ったデータを使うと判断ミスが起きます。
東芝の職場を明るくする会
連絡先  メール akaruku-tsb@kki.ne.jp