●東芝の労務管理と秘密組織「扇会」の検証
2017/12/04
上司にモノが言えない社風を作った(4)
−東芝の労務管理と秘密組織「扇会」の検証(4)
 「扇会」は、自主的に労働運動をする労働者を、 労働組合の役員、代議員、職場委員から排除する活動を、違法な方法で行いました。  労働組合の代議員、職場委員は、職場の代表として、代議員は組合員50人に1名、職場委員は組合員25人に1名の割合で選ばれます。  選出は職場ごとに無記名投票による選挙で行われます。
 青梅事業所では扇会が、代議員、職場委員の選挙で不正を行いました。  会社の指示を受けた扇会のメンバーが、選挙管理委員になり、選挙管理委員の立場を利用して投票用紙に細工をしたのです。  投票日の前日に扇会の選挙管理委員は、保管している投票用紙の裏側のすみに、ボールベンと定規で直線を引いたのです。  直線の長さは5mm、10mm、15mm、20mmと投票用紙ごとに変えました。  そして投票用紙を配るとき、5mmの投票用紙は〇〇さん、10mmの投票用紙は△△さんと、あらかじめ決めていたリストに基づいて手渡したのです。  投票後、回収した投票用紙をチェックして、誰が、どの候補者に投票したかを調べたのです。  自主的に労働運動をする労働者に投票した組合員は、職場の上司や勤労課員から、「自主的に労働運動をする労働者に投票するな。  付き合うな。  お前の昇給、昇格のマイナスになる。」などの脅しを受けました。  このような方法で、自主的に労働運動をする労働者を排除し、組合員は沈黙させられて行きました。  そのため、会社に嫌気がさして退職して行った組合員もいました。
2017/10/01
上司にモノが言えない社風を作った(3)
−東芝の労務管理と秘密組織「扇会」の検証(3)
 「扇会」に入って、労働者の言動を監視して、自主的に労働運動をする労働者を、 労働組合の役員、代議員、職場委員から排除する活動をすれば、賃金の昇給、 社員資格の昇格などを良くする、早くするという労務管理は、社会的道議からみても異常です。  そのためトラブルも起きました。
 扇会のメンバーのKBさんが、不満をTさんに漏らしました。  「お○○さんは扇会(員)だ。部長になったのは(なっとくできない)おかしいだろう。」  不満の内容を要約すると、お○○さんは、そう仕事ができるわけでもないのに、  扇会の活動も、ほかの扇会員と比べて少ないのに、勤労課にうまく取り入って部長になった。 (俺だけでなく)ほかの扇会員からも不満がでているということです。
 東芝青梅工場では、1970年代に扇会の監視対象にされた労働者は100名近くにのぼりました。  当時扇会が作成した監視対象者リストを、Tさんに見てもらうと半数の約50名は知らない人達でした。  労働組合の代議員、職場委員でもありません。  扇会の活動は、エスカレートして行き、民主的な会話をした労働者、 扇会メンバーが気に入らない労働者なども、監視対象者にしていったのです。  (後で分かったことですが)人権侵害の事件も起きました。1975年前後のころです。
 当時職場委員をしていたUさんは、扇会に監視されていることに気付きました。  そこで身を守るために、手帳の所有者欄はペンネームで○○川と書いていました。  その手帳が扇会に盗み見、盗み読みされたのです。  Uさんの話によると、寮の部屋に置いてあるときか、 会社の更衣室のロッカーに置いてある時ではないかとのことです。
 問題はそこで起こりました。ペンネームに使った「○○川」という名前の方が、 青梅工場に実在されていました。  Uさんの手帳を盗み見、盗み読みした扇会員が、勤労課に報告を上げて行く過程で、 手帳の所有者が間違われて、実在の「○○川」さんになってしまったのです。  ○○川さんは勤労課に呼び出され、手帳に記載された内容について聞かれました。  もちろん○○川さんは「知らないし、分からない」と答えました。  呼び出しは何度も行われました。  勤労課の不当、不法な行為は○○川さんを深く傷付けました。  しばらくして○○川さんは東芝を退職しました。
 監視社会が生み出した、許すことのできない事件です。
2017/09/03
上司にモノが言えない社風を作った(2)
−東芝の労務管理と秘密組織「扇会」の検証(2)
 扇会は、会社の言いなりにならない、自主的な労働組合運動をする社員を、徹底的に排除する活動を行いました。  自主的な労働組合運動をする社員を監視するため、昼休みなどの休憩時間には、話をした相手のチェック、 会話内容の立ち聞き、退社時には尾行までしました。  私生活を調べて、本人や話し相手を呼び出し、○○のところに行っただろうとか、○○との付き合いをやめろとなどと、 干渉や恫喝をおこないました。  扇会のメンバーの中には「(東芝青梅)工場の門を入ったら、(日本国)憲法は通用しない」と言うものまで現れました。  人権やプライバシーを平然と侵していました。

 地域で写真サークルに入っていた、Nさんは勤労課に呼び出されました。  Nさんが呼び出された応接室に行くと、会社の勤労課員と警察官が待っていました。  そこで言われたのは「カメラの盗難の届けがあり、その調査を行っている。あなたも疑われている。」と言うのです。  警察官は、東芝青梅工場のある青梅警察署から来ていました。  Nさんは東京都小平市に住んでいました。  地域的に離れていて、どう考えてもカメラの盗難とは、関係ありません。  その当時Nさんは、労働組合の職場委員をしていました。  会社の脅しによって、Nさんは退社しました。

 扇会のメンバーが、憲法違反の活動するまでになったのは、会社の教育でした。
 @一つは利益誘導です。昇給、昇格を良くする、速くするという方法です。
 Aもう一つは、外部講師などを招いての徹底した、排外主義、反共主義の教育でした。  排外主義、反共主義は、日本の戦前の軍国主義、ドイツのナチス時代の国民監視、暴力支配をもたらした考えです。  自分と意見が違うものを排除する方法です。

 いま青梅市議会議員をしている東芝社員は、扇会メンバーで、元労働組合委員長でした。  この社員は「共産党から会社を守るため労働組合役員になるんだ」と言って役員になりました。  「共産党から会社を守る…」という理論的根拠は何もありません。排外主義、反共主義はこういうものです。  いまの東芝の経営危機は、会社の経営陣によってもたらされた事実から見ても、排外主義、反共主義は、 支配者や経営者に都合のよい考えです。
2017/08/27
上司にモノが言えない社風を作った(1)
−東芝の労務管理と秘密組織「扇会」の検証(1)
 東芝は8月10日に「2017年3月期決算の有価報告書」を提出し、東証の上場廃止はひとまず回避できました。  しかし監査法人は、不正会計などを防ぐ仕組みが整っているかを評価する「内部統制報告書」について「不適正」との意見を表明しました。
 東芝は、不正会計防止のための仕組みは持っていましたが、機能しなかったのです。  これについてのマスコミや有識者、世論の論評は、上司にモノが言えない社風、お親方日の丸の体質、社長のワンマン的性格など挙げています。
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 東芝は1960年代後半から、労務管理のため(元)公安警察官を雇い入れ、その指揮の下で、労働者を監視するための秘密組織「扇会」を作りました。  一般の普通の社員が、会社の勤労課員などに誘われて「扇会」に入りました。  「扇会」に入ると、賃金の昇給、社員資格の昇格などが良くなる、速くなるなどの労務管理手法がもちいられました。

 会社は「扇会」メンバーに、反民主主義、反労働組合の教育を徹底的に行いました。  外部講師を招いて1泊2日の研修もさかんに行われました。  扇会は東芝の各工場(事業所)ごとに作られていたので、各工場の扇会の活動を掲載した機関紙「おおぎ」を発行しました。  また各工場の扇会の代表が年に数回集まり、活動交流会も開きました。

 扇会は、労働者の言動を監視して、自主的に労働運動をする労働者を、労働組合の役員、代議員、職場委員から排除する。  扇会メンバーが役員、代議員、職場委員になって、労働組合を「第2勤労部」と言われる組織に変質させるなどの活動を行いました。

 明るい会は、東芝青梅工場(事業所)で働いていたTさんを訪ね、扇会について聞きました。 (Tさんは現在は東芝青梅工場を退職されています。) Tさんはリベラルな考えを持ち、労働組合の職場委員もされました。  そのため扇会から監視され、扇会のメンバーから直接「職場委員を辞めろ」と恫喝されたことが何度もあったそうです。

扇会の労働者監視の方法を語ってくれました。
 ●会社の昼休み、食堂前で本を売る本屋さんのところで、社員が購入する本を調べている。  ある社員が本屋さんで「人生手帳」という雑誌を買ったら、勤労課に呼び出され、買った理由などを聞かれ、  遠まわしに「あなたのためにならないからから、購読しないように」と圧力を受けたそうです。  「人生手帳」という雑誌は、いまで言うなら、健康を保つために良い食事をしましょうという目的で編集されていました。  社会問題を取り上げた随筆も掲載されていたので、会社が干渉したのです。
●寮の部屋に侵入し私物を検査する。
 寮に住んでいたTさんの部屋に、日中侵入して私物の検査をしたそうです。  朝会社に出勤すると部屋には誰もいないので、侵入するのです。  部屋に侵入されているという証拠を取るため、Tさんは、入口のドアを開けたところの床に、 粉石鹸を薄く気付かれないように撒いて、置いていたそうです。  帰宅して、侵入者の足跡を確認したとのことです。
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東芝の労務管理と秘密組織「扇会」の検証については、随時記載して行きます。
Tさんや、他の方の証言も聞いておりますので、適切にまとめてご報告します。

東芝の職場を明るくする会
連絡先  メール akaruku-tsb@kki.ne.jp